『 記憶に残し、形で伝える 』
97歳で亡くなられた方の二七日のお参りのことでした。
お勤めが終わり振り返ると、お祖母さんのひ孫さんが手に立派な念珠を持ってちょこんと座っていました。
幼子が持つにしては立派すぎるので、「その念珠は?」と尋ねると「大婆に貰ったの」とー
その様な会話をしていると幼子のお母さんが、「この子が生まれた祝いに祖母が送ってくれた念珠です。それを子供用に仕立て直したものです。
祖母には8人のひ孫がいて、「手の合う子に育って欲しい、手の合う人生を歩んでほしい」と常々申しており、皆に誕生祝いとして念珠を送っています。
満中陰(四十九日)法要を迎えた時、ひ孫8人全員が大婆から送られた念珠を手に持ち最前列に座り、その後ろに孫・子ども大人達が囲んで座り正信偈のお勤めをしました。
その姿に接した時、「お祖母さんは生きている、子ども達の「いのち」の中に、南無阿弥陀仏と働き寄り添っている」と思いました。
『 先に生まれんものは後を導き、後に生まれん人は前を訪(とぶら)へ 』とのお論(さと)しに、唯々お念仏申させていただくご縁でした。
念珠を手にする度に、97年の人生・いのちを通して仏縁を結びお念仏喜ぶ身に育ててくれたお祖母さんの願いを思い出し、其々の人生・いのちを生き抜いてほしいと思いました。
寂静寺住職
佐々木龍明