那珂組コラム

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今月の法話 令和7年 4月[ 大光寺 佐々木賢人 ]

「 桜 」

春のお彼岸が終わり、新年度を迎えました。

新しい環境での生活が始まる方もいらっしゃると思います。
大光寺の隣には保育園があります。そちらの園長先生が昨年お寺を訪ねてこられました。建物の老朽化に伴い改修工事をされるとのことでした。保育園の門の脇に一本の桜の木がありますが、そちらも伐採されるとのことです。この時期は、毎年その桜が満開になるのを楽しみにしていたので残念でなりません。

桜と聞いて思い出されるのは親鸞聖人の残された
『明日ありと思う心のあだ桜、夜半に嵐の吹かぬものかは』
という歌です。いま美しく咲いている桜を明日も見られるだろうと思っていると夜半に嵐がやってきて花びらを散らしてしまうかもしれない、という人生の無常を説かれています。

もう一つ、私が春になると思い出す言葉があります。

『花より根になれ』

学生時代ラグビー部の恩師から教えて頂いた言葉です。ラグビーは15対15のスポーツです。

ONE FOR ALL  ・  ALL FOR ONE

の精神で80分間行います。

私が在籍していた時は総勢100名程の部員数でした。公式戦に出場し、Aチームのジャージを着用できる『花』となれる部員はほんの一部でしかありません。その一部のメンバーでも試合中に活躍するスター選手は数人です。
その他の部員は『根』となり、チームをサポートし部員を支え、それぞれの役割を果たすことでチームの承続、継続が図られるという教えです。
咲き誇っている桜も地面の下には目に見えないけれど力強く地に張った根があるお陰で、いま私に届いてくれています。

最後に、保育園の桜について「可能であれば、数十年の間に地域のこどもたちの成長を見護ってきてくれた桜を移植できないだろうか。」と園長先生にお願いをさせて頂きました。

合 掌

大光寺 住職 佐々木 賢人