「 鏡の中の自分 」
あなたは一日に何回鏡を覗きますか?女性の方は男性よりも回数が多いかもしれません。人に見られる職業の方は何度も鏡を見ることでしょう。
人はいつから鏡に映った自分を、自分だと認識するのでしょう。ある実験によると、二歳児はほとんどの子どもが鏡に映った自分を自分だとわかるそうです。動物はどうでしょう。最近の研究ではイルカやチンパンジーや象もわかるそうです。いっぽう、ネコやイヌなどは鏡の中の自分を、自分以外のネコやイヌと認識し鏡に向かって吼えたりします。
鏡に映る自分の姿を見て、上下は変わらないのに左右が反転していることに不思議さを感じませんか?実は左右が反転しているのではなく、奥行きが逆になっているのだそうです。ですから、いわゆる鏡文字は、紙に書いた文字を裏から透かして見ることと同じなのです。
鏡に映った自分が自分であることがわかる動物はいます。しかし、その自分が何者であるのか問い続けるのは人間だけでしょう。
浄土真宗ではこの「私」のことを凡夫と説かれています。しかし、果たして私たちは鏡の中に凡夫である自分を見ているでしょうか。「今朝はじょうずにひげが剃れたな」とか「今日は化粧のノリがいいわ」などと思うだけかもしれません。鏡に映った外見だけでなく、「凡夫」である内面にも気付かせていただきたいものです。
大円寺 住職 藤野 晃俊



