那珂組コラム

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今月の法話 令和4年 9月[ 光徳寺 藤野良信 ]

夏は怪談の季節ですが、日本で一番怖ろしい幽霊は四谷怪談に出てくるお岩様です。 英語で幽霊のことはゴーストと申します。皆様ゴースト現象という言葉お聞きになったことはお有りでしょうか。テレビの電波がビルに反射して映像の輪郭が何重にも重なる電波障害の事です。物の形がハッキリしない、どれが本当の映像か分からない所が幽霊の様なのでゴーストと呼ばれたのでしょう。

このゴースト現象は私達人間の心にも起きています。現代では承認欲求と呼ばれていますが、『いいね』とも呼ばれ、社会からの高い評価の中で存在感や、満足感や、優越感を確かめるものです。インターネットの発達で多くのことを知ることが出来るようになったことで、他者との比較がしやすくなりました。華やかな社会や、活躍する人を見て、それと自分を重ね合わせ、現実の自分が見えなくなったりしがちであります。世間を知れば知る程、現実との格差に焦燥感や無力感が募ります。この思いが内に向けば引きこもりとなり、外に向かえば社会への無差別攻撃ともなります。

大切なことは、ありのままの自分を受け入れ背伸びをせずに、地道に毎日毎日の生活を送ることではないでしょうか。継続は必ず未来に繫がる道を築いてくれます。 宗教は迷い多き社会に生きる私達に、心の平安を与えるものです。

浄土真宗のお念仏のお救いは、立派な人格者や社会から高い評価を得る人になることを目的とする教えではありません。平凡で誤り多き私達が、ありのままを阿弥陀様に抱き取られていく所に安心立命の世界が恵まれていく教えであります。 そこにはゴースト現象や、承認欲求を求める必要のない世界です南無阿弥陀仏のお名前を信じ称えることの中に完結した救いが届けられているのです。 理屈はさて置き先ずはお念仏申しましょう。