那珂組コラム

那珂組コラム

今月の法話 令和8年7月 [ 明応寺 藤野光信 ]NEW!

ホタル 祖母と過ごしたあの日の思い出

アジサイの花が見頃となりました。また、少なくなりましたが裂田の水路では、ホタルが光を放ちながら飛び交っております。このホタルの時期になると、亡き祖母の事が偲ばれます。

私はものごころついた時(3才くらい)から、仏間で祖母とひとつの布団で寝ておりました。その当時は、ホタルが乱舞していましたので、虫かごに沢山のホタルを捕まえては、蚊帳の中でホタルと一緒に過ごした事を今でも鮮明に覚えております。当時はテレビが無い時代でしたので、祖母は私が寝りにつくまで、いろんな本を読み聞かせてくれていました。

また、祖母はいつも私を本堂に連れて行ってお念仏を申しておりました。まだ幼少の私には、いったい何があってるのかが解らなかったけど、沢山の門徒の方が夜の法座にお参りされていて、その中でも忘れられないのは「恩徳讃(如来大悲の恩徳は…)」で、当時の響きがずっと私の耳には残っています。

その祖母は、私が9才の時に往生しました。昨日の事は忘れるような歳になりましたが、祖母と暮らした思い出はいつまでも心に残っています。

さて、祖母が往生して60年になります。近年、報恩講の法要にお参りされる人が少なくなりました。その原因はいろいろあろうかと思いますが、核家族化により家の中で手を合わせる場所が身近でない事や、自分自身が死ぬことを思案せず「毎日を健康で長生きしたい。そして、日本は他国に比べ安全で幸せな生活が送れている。」などと変な優位性を過信し暮らしている事にあるのかもしれません。でも今の世の中で一番こわいのは排他的な思想で、それが原因で戦争が繰り返されてしまいます。

親鸞聖人は「小慈、小悲もなき身にて…」と嘆かれました。お釈迦さまは、全ての命は平等ですと説かれました。
悲しいかな、人間は今後どうなるのでしょうか?人間以外の動物たちや生き物はその日生きていける分しか食べません。今年は、いつも来ていた鳥たちが全くこなくなりました。カマキリもかぶと虫も見なくなりました。近い将来、ほとんどの生き物が絶滅していく事でしょう。人間社会もそうなっていくのでしょうか?

中国の道綽禅師の主著である『安楽集』という御書物に、お釈迦さまが亡くなられた後には『正法』『像法』『末法』の3つの時代が来ると示してくださいました。今、私たちが生きている時代は最後の末法の時代です。仏さまのみ教えを聞く人もいなくなり、名ばかり形ばかりの仏教であり末期の状況です。

でも、この時代に光を与えてくださったのが阿弥陀仏の『本願他力』の教えです。必ず、私共を仏にすると誓われたみ教えです。

亡き祖母は、いつも私の事を案じ、願い、ひとつの布団の中で抱きつづけておられたんだなと。そして、祖母のおかげでお念仏を申す人生を歩んでおります。最後に、実は祖母が亡くなってから得度(僧侶の資格を拝受)するまでの間、本堂にはお参りしておりませんでした。ごく一般的なご家庭の若い世代の皆さんと同じように、仏さまとのご縁をどこか遠くに感じていた、ご縁がわかっていなかった、他力に気づかず過ごしてしまっていたということだったと思い返します。阿弥陀仏の『本願他力』にであう以外に、いよいよ末法の時代に私共の救い(成仏)は有り得ないというみ教えを、先達にならい、あらためてしっかりとお伝えしてまいりたいと思います。

明応寺 住職 藤野光信